11月から12月にかけて、急に寒さが増した感があり、インフルエンザも流行しているようで、体調管理には十分注意を払いたいものです。
今月は、いよいよ来年令和6年1月からスタートする電子帳簿保存法について、緩和措置が発表されていますので、その概要を説明させて頂きます。
経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上に資するために、「電子帳簿保存法」が改正され、令和4年1月1日から施行される、とのことでしたが、2年間の宥恕期間が設けられ、令和6年1月1日から実施されることとなりました。
しかしながら、いまだに電子保存に対応できていない中小企業は少なくありません。そこで、今回発表のあった緩和内容を説明いたします。
各税法で、原則、「紙」での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で、電磁的記録(電子データ)による保存を可能にすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務を定めた法律で、3種類に区分されます。
(1)電子帳簿保存
(2)スキャナ保存
(3)電子取引
(1)の電子帳簿保存については、帳簿の範囲が見直され、経理実態に沿った形になり、その範囲は以下の通りです。
・仕訳帳
・総勘定元帳
・手形帳 売掛帳 買掛帳
・有価証券に関する事項が記載された台帳
・固定資産台帳
・売上帳 仕入帳 経費帳
現金出納帳、預金出納帳、賃金台帳などはこの範囲から外れることとなりました。
又、市販の会計ソフトはそのほとんどが優良な電子帳簿の要件をクリアしています。
つまり、市販の会計ソフトを使用し、電子帳簿での作成を選択すれば、帳簿に関しては電子帳簿保存法の要件を満たしていると考えられます。
令和6年1月1日以降は、メールで送信された請求書やカード利用明細書等の書類は紙ではなくデータで保存しなければならないということになります。
これは事業規模関係なく、企業・個人事業主が対象となります。
最近では、楽天市場やAmazon等インターネットでの商品購入の増加や、取引先からの請求書、契約書等を電子メールで受領する事が多くなってきています。
その際、従来は電子で行われた取引をわざわざ紙に印刷をして保存していた企業も多かったと思いますが、今後は紙保存が廃止となり電子で受け取った場合は、そのまま電子データで保存することが義務化されます。
電子データで保存する際には、保存要件があり要件通りに保存することが求められておりましたが、今般、以下のように要件が緩和せれております。
電子取引データ保存については、税務調査等の際に電子データのダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)に応じるようにしていることを前提として、次のいずれかに該当する場合には、電子取引データの保存要件のうち、検索機能の確保が不要となりました
(1)
2課税年度前の売上高が5,000万円以下の方
(2)
電子取引データを印刷した書面を、取引年月日その他日付及び取引先ごとに整理された状態で税務調査の際に提示・提出することができるようにしている場合
電子取引データ保存については、次のいずれにも該当する場合、電子取引データの保存要件の全てが不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができます。
(1)
保存要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
相当の理由とは・・・
システムや社内ワークフローの整備が間に合わない、環境整備が整っていない、人手不足、システム購入の資金不足など
(2)
税務調査等の際に電子データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)に応じ、電子取引データを印刷した書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合。
緩和措置により、新たなシステムを導入せずとも、電子取引データをデータで保存し、税務調査の際に提示・提出できれば、「電子帳簿保存法」に対応できそうには感じられますが、「不当な訂正削除の防止に関する事務処理規定」を
作成し備え付けておくことをお勧めします。
(国税庁HPにサンプルが掲載されています)