コートを羽織る季節になりますと、今年もあと1ヶ月余り、年末調整や賞与など経理担当の方はあわただしく年末を迎えます。又、個人事業主や12月決算法人は決算作業も加わり、固定資産に対する減価償却費の計算などがあります。
今回はその減価償却費を計算する上で大切な耐用年数について説明します。
減価償却を行う場合、税務上の償却限度額をまず計算しますが、そのためには耐用年数をどのように決定するかが問題となります。
普通乗用車の法定耐用年数は6年ですが、この耐用年数の決定を企業の自主性にまかせ、3年や10年で計算すると、恣意性が入りやすく、利益調整が行われる可能性があります。
従って、税法では全ての減価償却資産について画一的に耐用年数(法定耐用年数)を定めています。
簡単に言うと、300万円の車を6年で償却すれば、1年あたり50万円の償却費つまり経費を計上する事ができます、3年なら1年あたり100万円、10年なら30万円となりますが、総額300万円を超えて償却することは出来ません。
耐用年数が短ければ、1年当りの償却費は多くなります。
償却限度額の計算では原則として法定耐用年数を使い、企業が独自で耐用年数を見積ることは出来ません。
しかし、法定耐用年数が実際の使用実態に合わない場合もあります。
そこで、各企業の実態に近づける方法として、「増加償却」や「耐用年数の短縮」の制度があります。
<増加償却>
機械装置の実際の使用時間が平均的な使用時間を超える場合(増加償却割合が10%以上)に利用でき、申告期限までに税務署長へ届出をします。
<耐用年数の短縮>
特定の事由により、減価償却資産の使用可能年数が法定耐用年数に比しておおむね10%以上短いような場合に所轄国税局長の承認を受ければ、短い耐用年数で償却することが出来ます。
特定の事由とは、所在場所の地盤隆起・沈下、資産の陳腐化・著しい腐食・著しい損耗、一般的な材質や製法とは著しく異なる、などです。
法定耐用年数は新品の減価償却資産を前提として定められていますので、中古資産の使用可能年数(新品よりも短い)を考慮すると、法定耐用年数をそのまま適用すると実態に合っていません。
そこで、中古資産に適用する耐用年数は、(1)法定耐用年数、(2)見積法による年数、(3)簡便法による年数、の三つの中から選ぶことになります。
(1)法定耐用年数
新品と同じ法定耐用年数を適用することもできます。
(2)見積法
その資産をその用に供した時以後の使用可能期間の年数を合理的に見積もり、その年数を耐用年数とする方法。
(3)簡便法
使用可能期間を見積ることが困難な時
A:法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数×20%
B:法定耐用年数の一部を経過した資産
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
<例> 新車から2年3ヶ月経過した中古の普通自動車の簡便法による耐用年数
(6年-2年3ヶ月)+2年3ヶ月×20%=4.2年⇒4年(1年未満端数切捨)
※中古資産の使用可能期間を見積ることは、なかなか難しいので、実務的には簡便法によることが多いです。
但し、中古資産に支出した改良費がある場合には、上記の計算とは異なりますので注意して下さい。