ラーメン野郎さんが、ラーメン屋で発した言葉がずっと気になってます。
「この先どうなるか、不安です」
「Web業界にいる奴は、みんなそう思ってるんじゃないですかね?」
「生き残ってくには何をすればいいのか、考えちゃいます」
…これ、私も常に抱えている気持ちです。
そして、正直これが仕事に向かう大きな「動機付け」でもあります。
実際、Web関係は技術のスピードが速いので、一年前はちやほやされたスキルでも、今無用!って極端なことは普通に起こっています。
今じゃWEBデザイナー名乗るならJS、PHP、MySQLくらいはふつーに持ってたいスキルとか言われますが。その中にflash入ってねーもんな。必死に身に付けてその筋じゃいい仕事してた人たちがどうなったのか、想像するだけで気の毒でなりません。
こんな時ですから、むしろ求められるのは「俯瞰して見る力」だと思います。
いや、技術論の細かい話も必ず必要ですし、軽視できません。
しかし、その一つひとつにとらわれ過ぎて、大きな目的を見失いがちな場面が多いのもWeb業界というか、あっちこっちの集団、チームにありがちな話ではないでしょうか。
(マニュアルにあるセレクタの命名法が俺は気に入らないとか)
(どう考えてもこのアイコンデザインはUX上悪影響だとか)
(いまどきFaceBookよりLineだよねとか)
(ビッグデータから得られる知見を活用できない会社は死ぬとか)
(デジタルマーケティングとリアルマーケティングの定義がどうとか)
これ全部、大事なのは顧客(担当部署)がどういう環境で、どういう品質の情報にアクセスしたいか/できるかでしょ。そこから考えたり、テストしてデータ取ればおのずと答えは出る話ばっかりなのに、延々頭の中でこねくり回してたりしますよね。
どうも、そこら辺の本質的な議論と素早い実践がすっぽり抜けて、各論・極所・先っぽでの話になってる現場が多い気がするんですよね。
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ECサイト運営で大事なことと言えば、突き詰めればお客様がこのサイトで買う理由はなんなんだ?と言うことに尽きますし、ソースの良し悪しや、サイトデザインやバナーの中身はいろいろあるうちのひとつの要素、それ単体でどんな効果が得られるかとか、そんな話を延々してても仕方がないというか。
売上に影響を及ぼす変数はそれこそ無数にある中で、それぞれ貢献度合いは違うし、得られる結果も様々ですし。
その答えを持ってるのは常に自分ではなくお客様なのだから、数撃つしかないと思うんですよ。数撃って、ログとって、何が効くか効かないかを見極め続ける。うまくいった方法があれば、横展開してレバレッジをかける。それを誰よりも高速で繰り返す。それが今も昔もWEBで結果を出すベストプラクティスですよ。変わってない。
俺が作った大事なバナーとか、俺の入魂の美しいコードとか、そういう「情」を排して、厳しく見ることです。渾身の100点は要らない。30点でも10回とれば300点。
その中で、ああすればこうなる、こうすればああなるを知っていく。現実に思い通りのシナリオが描けたら、脳内アドレナリンが出る瞬間です。面白さ感じちゃうポイントはここです。ある種のゲームです。
しかも人間は心理的な癖とか傾向を持った生物ですから、行動心理学とかの本を繰れば色々小ネタも裏ワザも思いつきます。
弊社で言えば主要商材は業務ソフトですから、法改正や税制が動けば特需があります。季節的なトレンドも当然あります。その辺の知識をもって売り場を仕掛ければ大きく数字に跳ね返ります。時事ネタをインプットすべき理由はここにあります。
で、売り場作りは流通・小売りの世界ですね。その辺は彼らにWEB業界なんかブッ飛んじゃうくらい膨大で莫大な知見の蓄積があったりします。そういうのをこっそり拝借するとかね。
一歩引いたところから課題を見つめて、あるべき姿を捉えることができれば、その方法論は無数にあると思うのです。
WEBがどうとか、そんな狭い範囲で考えないことです。WEBが難しくなったのは、結局、進化と共にできることが増えすぎて、技術も細分化が進み、また競争環境も悪化し、簡単には成果が出ない=現実社会と全く同じ世界になっただけの話です。一人で何から何まで何でもできるスーパーマンは居るし、目立つけど、私みたいな雑魚はそうなれないんです。なる必要もない。
そして、業界関係なく現実社会は過去も現在も未来もずーっと変化の只中にあり、留まることはできないわけです。
WEBが廃れたら、しれっとWEBの外に行くだけです。
常にそういう視点をもつよう心がけると、結局自分の影響力のなさがあまりに浮き彫りになりますので、目の前の仕事を一生懸命やるしかねーよなーということに落ち着きます。落ち着きました。はい。
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皆多かれ少なかれの不安を伴って生きていると思います。
でも、その不安にとらわれて、目移りしたり、努力の焦点がぶれたりぼやけたりすることの方がもっと恐ろしいと私は思います。
人間、限られた時間の中で、できることとできないことがある。
能力の多寡にかかわらず、運命は流れ着くところに流れ着く。
向き不向きや身につくことも、つかないことも正直ある。
気分だってムラがあるし、面倒な雑用仕事も消せないし、マンションをいくつも買える給料をもらえるような会社じゃない。ここは。(今のところ)
しかし、仕事ってーのは面白い。
のめりこんだ分だけ、仕事は努力に応えてくれる。
できることが増えれば増えるほど、面白くなってくる。
毎日が発見の連続だし、新しい学びの繰り返し。
やがて大きな変化が訪れ、手持ちの技能が全て陳腐化した時、新たな知識のインプットを余儀なくされる場面は、どんな仕事をしていても起こり得る。
その時のための、一番のリスクヘッジは、鋭敏な「思考能力」と自分に合った「学び方」の型。
頭から煙が出るまで、耳から汗が出るまで考えまくること。
常に新しい分野に興味を持ち、知人・友人の話を聞いて体系立てること。そして、新しい人に会い続けること。
本を読むこと。
小説でも何でもいいから、言語の感覚を研ぎ澄ますこと。
遊ぶこと。
「自分の領域」を離れること。
無我夢中になること。
そういう「濃密な時間」を、毎日じゃなくても、淡々と積み上げていくこと。
flashを必死に身に付けてその筋じゃ「いい仕事してた人」たちは、路頭に迷うんじゃなくて、また新たな言語で「いい仕事」してるもんなんですよ。結局。
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人は、人を好きになる。
人は、技術や知識だけを買うんじゃない。
結局、人は人の可能性を買うんだ。
採用だって、営業だって、最後は一緒に仕事をしたくなる人を選ぶ。
恋愛だって友達だって、魅力ある人に好意を寄せる。
人に好かれるよう、己を磨こう。
「生き残る」じゃなくて、生かされて行こう。
誰もが羨む肩書とか、世間を目に見えて動かす権限とか、ブランドモノの名刺は今すぐ用意できないけれど。
自分も抱える「消えない不安」を笑い飛ばして、目の前の仕事の面白さに安心して熱中できる場を維持することが、今このチームのマネジャーである自分がすべきことだと、思います。
きれいごとだけじゃ仕事なんてできないけど。
きれいごとの一つや二つも吐けない上司なんて、粋じゃないね。