従業員さんに時間外労働をさせた場合には通常賃金の25%増で、また休日労働をさせた場合には通常賃金の35%増で割増賃金を支払われている会社さんも多いのではないかと思います。
しかし実際のところ、必ずしも25%増や35%増で割増賃金を支払わなくても法律違反にはならないことをご存じでしょうか。
今回はこの点について取り上げてみたいと思います。
所定労働時間とは、労働者が通常勤務しなければならない時間のことをいいます。
例えば、9:00~17:00が通常勤務すべき時間で途中12:00~13:00が休憩時間であれば所定労働時間は7時間となります。
一方、法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限(1日8時間、1週間40時間)のことをいいます。25%増で割増賃金を支払わなければならない時間外労働とは、後者の法定労働時間を超えて勤務した労働時間のこと
を指します。
1.の例で18:00まで1時間残業したとしましょう。
この場合、9:00から18:00まで勤務で休憩1時間を除くと実働8時間になります。
本来勤務すべき時間は17:00までですので17:00から18:00の1時間がいわゆる「残業」ということになります。
この残業1時間は、所定労働時間を超過していますが、法定労働時間内に収まっております。
この場合、この1時間分の残業については通常勤務した場合の1時間分を支払えばよく、28%増の割増賃金の支払いは必要ありません。
賃金の時給換算が1,000円であれば1,250円ではなく1,000円を支払えばよいことになります。
所定休日とは、労働者が通常勤務しなければならない日以外の日のことをいいます。
例えば、月曜から金曜が通常勤務すべき日であれば所定休日は土曜日曜となります。
一方、法定休日とは、労働基準法で定められた休日(1週間に1回の休日)のことをいいます。
35%増で割増賃金を支払わなければならない休日労働とは、後者の法定休日に勤務した労働時間のことをいいます。
3.の例で土曜日に休日労働したとしましょう。
この場合、本来勤務すべき日は月曜から金曜日ですので、土曜日の労働はいわゆる「休日労働」ということになります。
この土曜日の労働は所定休日に労働していますが、法定休日として日曜日が確保できています。
従って、土曜日の休日労働については35%増の割増賃金を支払う必要はなく通常の賃金を支払えばよいのです。
ただし、土曜日に労働した結果、月曜から土曜まで8時間×6日=48時間労働となった場合は、土曜日の8時間については法定時間外労働となりますので、25%増の割増賃金を支払う必要はありますので注意が必要です。
この場合、賃金の時給換算が1,000円であれば1,350円ではなく1,250円×土曜の労働時間分を支払えばよいことになります。
「所定労働時間」や「法定労働時間」など、労働関係の用語には理解しにくいものがたくさんあります。
しかし正確に理解しておかないと、従業員さんから突っ込まれるケースも多いです。
皆様には順次、労務管理用語をご紹介していければと思います。