労働者が通勤や帰宅途中に怪我などをした場合、労災保険から通勤災害として治療費や休業期間中の賃金の補償がされます。
ここでいう「通勤(「帰宅」も含む。)」とは、原則として、自宅と就業場所の間の往復をいいます。
それでは、就業場所から帰宅する途中でスーパーに買い物に行き、その後けがをした場合や、友人との飲食後の帰り道でけがをした場合は、通勤災害として労災保険の補償は受けられるのでしょうか。
このように帰宅途中に「寄り道」のような状況が発生することを「逸脱・中断」といいます。
今回は、このあたりについて取り上げてみたいと思います。
通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡のことをいいます。
通勤災害に認定された場合は、仕事中の病気や怪我であるいわゆる業務災害と同じく、労災保険の制度から治療費や休業補償が受けられます。
通勤災害の認定基準は、「通勤または帰宅と相当因果関係があること」、つまり、「通勤に伴う危険が具体化したこと」が条件となっております。
例えば、通勤途中で転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合は通勤災害になります。
一方、怨念をもって喧嘩して負傷した場合は通勤災害にはなりません。
独身労働者が食事に食堂へ立ち寄り、その後帰宅途中に怪我をした場合は、通勤災害となります。
病院で診療してもらい、その後帰宅途中に怪我をした場合は、通勤災害となります。
スーパーに買い物に行き、その後帰宅途中に怪我をした場合は、通勤災害になります。
会社帰りに友人と飲みに行き、その後帰宅途中に怪我をした場合は、通勤災害にはなりません。
「逸脱・中断」については次のように定められています。
「労働者が、移動の経路を逸脱・中断した場合には、当該逸脱・中断の間及びその後の移動は、通勤としない。ただし、日常生活上必要な行為であり、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱・中断の間を除き、この限りでない。」
つまり、会社から自宅にまっすぐ帰る場合の怪我は通勤災害になりますが、「寄り道」する場合は、寄り道中の怪我は通勤災害にはならないが、その後については「寄り道」の内容が日常生活上不可欠な行為であれば通勤災害になるし、そうでなければ通勤災害にはならないということです。
企業の担当者におかれましては、通勤帰宅途中に怪我をしたという申し出が労働者からあった場合は、そのあたりの詳細を確認する必要があります。