ここ数年、地震、台風、水害など大規模な災害がたびたび発生しています。
企業はこれらに対応するために、従業員に残業や休日出勤をさせることもあると思います。
残業や休日出勤させるには、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」いわゆる「36協定」を締結し、労働基準監督署に提出しておく必要があります。
しかし、非常災害などに対応する場合においては、実は「36協定」とは関係なく、時間外・休日労働を命ずることもできるのです。
そこで今回は、非常災害など緊急時の時間外・休日労働について取り上げてみたいと思います。
労働基準法第33条には、「災害その他避けることのできない事由によって、
臨時の必要がある場合は、事前に労働基準監督署の許可を受けて、その必要の限度において、時間外・休日労働をさせることができる」と定められています。
また、同条文で「事態急迫のために労働基準監督署の許可を受ける暇のない場合は、事後に遅滞なく届出なければならない」とも定められています。
つまり、非常災害時などは労働基準監督署から事前に許可を受けるか又は事後に遅滞なく許可を受けることで、36協定とは関係なく、労働者に時間外・休日労働をさせてもよいということなのです。もちろん、この場合であっても、時間外・休日労働させた時間については、時間外・休日手当を支払う必要があります。
それでは、上記における「非常災害時」とはどのような状況のことをいうのでしょうか。
厚生労働省が令和元年6月7日に発出した通達によると、「地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応、急病への対応、災害により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインへの対応、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応」などが非常災害時に該当すると述べています。
救急病院等の中には、夜間の急患が少ないために、それに対応できる36協定になっていないことがあります。そのような場合に急患に応対した時間については「非常災害時」となり、後日労働基準監督署に届出をすることになります。
また、救急病院でなくとも、手術を始めたところ病状が深刻な事態にあることが分かり、手術時間を大幅に延長せざるを得ない事態になったということもあるでしょう。そのような場合も「非常災害時」の扱いになるものと思われます。
2.でご紹介した通達には、ライフラインには「電話回線やインターネット回線等の通信手段が含まれる」を記載されています。
今まではライフラインといえば、電気・ガス・水道という意味合いが強かったのですが、時代背景も考え、あえて上記の表現を加えたものと思われます。
つまり、電話回線などの復旧作業なども「非常災害時」という扱いになるわけです。
今回ご紹介させていただいた、非常災害時の時間外・休日労働は、あくまで特例の位置づけです。
したがって、通常業務が取引先の都合で突然忙しくなった場合などは適用されず、通常の36協定が適用されることになりますので、ご留意いただきますようお願いいたします。