採用されてから6か月経過すると、従業員さんは10日間の年次有給休暇(以下「年休」という)を取得することができます。
そこから1年経過するとさらに11日の年休の権利が付与されます。
その後も1年ごとに年休が付与され、勤続6年6か月以降は毎年20日間の年休が付与されることになっています。
しかし、最も新しい統計によると、1年間に付与された年休のうち、取得された日数は50%を切っているのが現状であり、政府が目指している年休取得率70%には程遠い状況になっています。
そのような状況の中、少しでも年休の取得率を高めようと、今般労働基準法が改正され、年休の強制付与の制度ができました。
そこで今回は、新しくできた年休の強制付与制度について取り上げたいと思います。
新しくできた年休の強制付与制度は、年休の日数が10日以上の労働者に対して、このうち5日については付与日から1年以内に時季を定めて付与しなければならないというものです。
例えば、10日間の年休を付与された労働者が自主的に取得した年休が4日間であれば、残り1日分の年休を強制的に取得させる義務が企業に課せられるということです。
年休の残日数は翌年に限り繰り越せることになっています。
しかし、年休強制付与制度の対象になるのは、繰越分を除いた当年付与の年休日数が10日以上の労働者となっております。
年休の強制付与制度の対象者は、前述のとおり本年分の年休として10日以上付与された労働者です。フルタイム勤務の労働者であれば、入社から6か月経過したら10日の年休が付与されますので、その時点から強制付与の対象者になります。
しかし、勤務日数や労働時間が少ない労働者の場合は「年休の比例付与」の制度が適用され、入社から6か月経過しても10日未満の年休しか付与されないケースもあります。
しかし、これら労働者についても、勤続年数が増えるに従い新たに付与される年休日数が10日以上になる場合もありますので、その場合はその時点から年休強制付与の対象者になりますので、注意が必要です。
会社によっては、労使協定を締結したうえで、年休の計画付与をしているところもあると思います。
その場合は、年休計画付与の日数と労働者が自主的に取得した日数を5日から差し引いた日数が年休強制付与の日数となります。
今回ご紹介した年休強制付与の制度は、年休の取得率向上を目指して導入されたものです。強制付与といっても会社が指定した日に強制的に年休を取得させられるというわけではありません。
あくまで年休の取得は労働者が自主的に行うものであり、取得日数が5日未満の場合に5日以上取得するように会社が労働者にお願いする制度だと考えた方がよいでしょう。
なお、年休強制付与制度は、2019年4月1日から施行されます。