皆さんの会社では、従業員さんが他の営業所や顧客先などへ出張されることはないでしょうか。
そのような場合によく問題となるのが、出張中はどこからどこまでが労働時間になるかという点です。
出張においては、普段より早く家を出て、帰りも遅くなるということがよくあります。つまり拘束時間が長くなるため、通常より労働時間が長くなり残業が発生するのではと疑問に思われることもあるでしょう。
そこで今回は、出張中の労働時間の扱いについて取り上げてみたいと思います。
皆さんもよくご存知のように、出張とは、通常の勤務すべき事業場を離れて、別の場所で勤務することをいいます。
したがって、出張には、通常の通勤とは異なる経路による移動を伴い、移動時間が普段の通勤時間より長くなることがあります。
なお、別の場所で勤務する時間が数時間程度の場合は、出張ではなく外出と表現されることが多いです。
労働時間とは、使用者の指揮命令下におかれている時間のことをいいます。
例えば、業務に従事している時間は、使用者の指揮のもとで業務遂行しているわけであり労働時間となります。
一方、通勤にかかる時間については、使用者が逐一管理しているわけではありませんので、労働時間には該当しません。また、休憩時間についても、自由に利用することが認められておりますので労働時間には該当しません。
労働基準法には、「事業場外のみなし労働時間制」という考え方があります。
これは、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなすというものです。
これは主に営業職などに適用されるのですが、出張の場合にも労働時間を算定しがたいという要件が満たせれば適用することができます。
つまり、出張の場合、実際の労働時間が10時間であったとしても、就業規則において所定労働時間が8時間と定められていれば、8時間勤務したものとみなされるのです。
ただし、出張中の労働時間について、どこに何時から何時まで滞在し業務に従事しなさいというように事前にこと細かく決められていたり、複数人のグループで出張する場合でグループ責任者の管理のもと業務遂行する場合については、「事業場外のみなし労働時間制」は適用できないので注意が必要です。
それでは、出張先と自宅との間の移動時間の扱いはどうなるのでしょうか。
2で前述の労働時間の定義からいいますと、移動時間は、電車の中で睡眠を取ったり本を読んだりと比較的自由に時間を過ごすことができるものと思います。
従って、使用者の指揮命令下におかれているわけではなく、労働時間ではないものと解釈されます。
そのため、出張の際に普段より早く家を出て、帰宅が普段より遅くなったとしても、移動時間については労働時間として扱う必要はないのです。
なお、移動時間に高額の商品の管理など特別に指示を受けた場合については、移動時間も労働時間となりますので注意が必要です。
3、4のとおり、一般的に出張については、業務に従事している時間が労働時間として扱われ、移動時間については労働時間としては扱われません。
また、出張については「事業場外のみなし労働時間制」が適用され、実際に業務に従事した時間とは異なり、所定労働時間労働したものとみなされます。
従って、一般的に出張については、特別な場合を除き、残業なしの所定労働時間労働したものとみなして差支えない場合がほとんどであるものと思います。