労災保険には、仕事中の怪我(業務災害)を補償するものと通勤途中の怪我(通勤災害)を補償するものの2種類があります。ところで、上記の通勤災害における「通勤」とは、一体どこからどこまでのことを指すのでしょうか。
今回は、労災保険における「通勤」について見てみたいと思います。
労災保険法によると、「通勤」とは「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間の往復を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」と定義されています。
つまり、簡単にいいますと、家と会社の間の往復行為のことを通勤というわけです。
それでは、通勤の起点は具体的にはどこからになるのでしょうか。
上記の定義によると起点は住居となりますが、住居の内容によって扱いが異なります。
例えば、マンションやアパートの場合の起点は自室の玄関ドアとなりますが、一戸建ての屋敷構えの住居の場合の起点は、門、門扉、又はこれに類する場所となります。
つまり、自身で管理している部分とそうでない部分の境目が通勤の起点となるのです。
それでは、通勤の終点は具体的にはどこまでになるのでしょうか。
上記の定義によると終点は就業の場所となりますが、就業場所の状況によっては扱いが異なります。
例えば、工場の場合の終点は工場の門となりますし、雑居ビルに入居している会社の場合であれば、入居している部屋の入口が通勤の終点となります。
また、会社もよりの駅から会社専用のマイクロバスでの送迎がある場合であれば、マイクロバスに乗った時点が通勤の終点となります。
つまり、会社が自身で管理している部分とそうでない部分の境目が通勤の終点となるのです。
会社には出勤せず、取引先に直行直帰するような営業担当の場合、住居から最初の取引先までが通勤となり、最後の取引先から住居までが通勤(帰宅)となります。そのため、その途中の取引先から別の取引先までの移動については、通勤ではなく、業務中として扱われます。
通勤に該当するか否かにより、労災保険の通勤災害とされるのか、それとも業務災害とされるのかの違いが出てきます。
また、通勤に該当しない場合、労災保険が適用されず健康保険の対象となる場合もあります。
このように「通勤」の定義は、保険の適用に当たって、非常に重要になってくるのです。