仕事以外の原因で病気や怪我をした場合、その療養のため仕事を休み、その間の賃金が支払われていない場合は、健康保険の制度から傷病手当金というものがもらえます。
ところで、平成28年4月1日より、傷病手当金の金額の計算方法に変更がありました。そこで今回は、傷病手当金の新しい計算方法についてご紹介させていただきたいと思います。
傷病手当金とは、健康保険の被保険者が疾病又は負傷により療養のため労務不能となり、給料をもらうことができない場合に、健康保険の方から金銭を支給する制度です。
具体的には、下記の場合に支給されます。
【傷病手当金の支給要件】
次の(1)から(4)のいずれにも該当していることが必要です。
(1)療養のために仕事を休んでいること
(2)働くことができない状態であること
(3)働くことができない日が継続して3日間以上あること
(4)給料の支払いがないこと
平成28年3月31日までは、傷病手当金は下記の方法で計算されていました。
傷病手当金の1日当たりの金額 = 休んだ日の標準報酬月額÷30日×3分の2
平成28年4月1日以降は、傷病手当金は下記の方法で計算されます。
傷病手当金の1日当たりの金額
= 支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2
つまり、平成28年3月以前は傷病手当金の支給対象日の月の標準報酬月額をもとに金額を計算していたのですが、平成28年4月以降は支給開始日を含む直近12か月の標準報酬月額の平均を使用して計算するように変わったのです。
これにより、今までは月の切り替わり目など、標準報酬月額が変わると傷病手当金の額が変更されることもあったのですが、今後は原則として傷病手当金の金額が途中で変動することはなくなりました。
平成28年4月1日以降の傷病手当金の計算の具体例を一つご紹介します。
【傷病手当金の支給開始日が平成28年6月1日の場合】
標準報酬月額 平成27年7月~平成27年8月 26万円
平成27年9月~平成28年6月 30万円 と仮定します。
この場合、
支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額の平均
=(26万円×2か月+30万円×10か月)÷12か月
= 293,303円
支給日額
= 293,333円÷30日×3分の2
≒ 6,520円
よって、1日当たりの傷病手当金の額は6,520円となります。
今回の傷病手当金の支給日額の計算方法の改正により、傷病手当金と出産手当金との調整や健康保険に加入してから1年未満の者に対する特例など、いろいろな配慮すべき事項が新たに登場しました。
事務担当者の方におかれましては、これまで以上に注意して作業していただく必要があります。
なお、市町村等が運営する国民健康保険については、傷病手当金の制度がない場合もありますので、ご留意願います。