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洛西(らくさい)はどこにある?(後編)

息子と竹林公園を訪ねた時のこと。
なぜこんな場所に公園があるのかと訪ねられました。

「昔、山だったところを切り開いたんよ」
「山を切るなんて、あかんことやないの?」
「その時は住む場所が足らんかったから、仕方ないんやで」

さすが、ネイティブSDGs世代。
今、自然にあふれたニュータウンも、元は自然を破壊して作ったことに変わり
ありません。

しかし、半世紀を経た洛西ニュータウンの景観は、巨大に育った街路樹をはじめ、ふんだんに配された緑地や、街路樹と公園などの「緑」や「余白」が存在感を増しています。
コロナ禍でなにかと過密が槍玉にあがりましたが、それとは無縁な環境が魅力
的にも映ります。

■竹林公園

南福西町バス停から住宅街に入り、忽然と姿を現す階段を登るとたどり着く公園です。
この辺り、ニュータウン開発前は竹林に覆われていたということは前回述べましたが、公園はその記憶を伝える施設、という位置づけです。

敷地内には、全国でも珍しい「竹の資料館」があり、四角い竹とか、黒い竹とか、亀甲模様の節がある竹など、見たことのないような竹そのものとその生態の資料が、所狭しと展示されています。

京都の伝統産業との関わり合いやフィラメント(白熱電球の光源、最初は竹でした)など、人と竹の縁や歴史にも触れられます。
確かに竹は、うちわや扇子、箸など生活の中で利用したり、たけのこを食べ
たりなど、とても身近な存在なのに、普段あまり気に留めませんよね。

また、生態園には、多種多様な竹や笹が植えられています。
そもそも、竹と笹の違い、ご存知ですか?
巷では今ちょっとした苔ブームですが、竹ブームくるか?

この生態園の端に、石仏が多数並んでいるところがあります。
これ、地下鉄烏丸線工事の際に出土した、旧二条城の石垣なのだそう。
ん?石垣?
おかしいですよね。なぜ仏が石垣?

ここで言う「旧」二条城は、今の徳川が作った二条城とは位置も異なる、織田信長が1869年に足利義昭のために作った城のことです。
ちょうど一年前、「麒麟が来る」でもこのエピソードは描かれていましたね。

信長は、とにかく執拗に権威を否定する人物ですが、当時の市中の石仏を集めさせ、これを敷いて石垣にしてやろう、それで示威しようというわけですから、やはり凄まじい。
眼前に広がるは、その時の石仏なのだと思うと、普段から静かな場所ですから、余計に恐ろしく感じます。

なお、職員さんによると、毎年向日市(むこうし、竹林公園の東端は向日市との市境です)の小学生が授業の一環として見学に来るようですが、京都市ではそういう取り組みはないようです。
向日市にとって「竹」は町おこしの重要なファクターですが、京都市はいろいろあるから優先度が低いのかもしれません。

とは言え、洛西地域のアイデンティティとも言えるのが竹です。
阪急洛西口駅の駅名標が「竹」を模しているのも、そんな意味があるのです。

◇京都市洛西竹林公園
https://chikurin-park.com/

■竹の径

竹林公園の東端は向日市との市境ですが、向日市イチ押しの景観がここ、竹の径です。
ある意味、京都市営の竹林公園への通路を向日市が飾るみたいな、妙なことになっていますが、人で溢れる嵐山など行かんでも、風情ある竹林の道が独占できる、誰も映りこまない「映えスポット」としても注目です。

ここに限らず、京都乙訓地域の竹林は、密生して土壌を荒らす「里山の厄介者」としての竹とは異なり、明るく、穏やかに風が抜ける心地よい空間です。
それもそのはず、高級筍の生まれる畑であり、農家さんの財産そのものです。
決して立ち入ってはいけません。

◇向日市 竹の径
https://www.muko-kankou.jp/recommend/detail.html?id=585

■大原野神社

ニュータウンを少し外れた小塩山の麓に位置するのが大原野神社です。
起源は784年、都を平城京から長岡京へ移した際、奈良の春日大社の祭神を分祀したといわれています。このため、本殿の姿は春日大社に模しており「京の春日さん」「京春日」と呼ばれることもあります。

広大な境内に入るとまず目につくのは美しい池です。
文徳天皇が奈良の「猿沢池」を模して造ったとされています。
池の端には蕎麦屋があって、一息つくことができます。

全国で唯一とも言われる鹿の狛犬(という表現もどうなのか?狛鹿?)と並んで見える本殿は、春日大社を模して造られており、京春日の名も納得です。

しかしながら、建物は応仁の乱で一旦焼失しており、江戸後期の再建とされています。
戦火は市街地からこんなに離れたところまで及んでいたのですね。

境内は、桜紅葉の最盛期でもない限り、市内の喧騒とはかけ離れた静謐な空間でした。
数年前すぐ裏手に京都縦貫道が通ってからは、僅かながら車の走行音が響くため、以前の風情を知る者としては少し残念に思いますが、静かに落ち着いて参拝できる空間であることに変わりありません。

◇大原野神社
http://oharano-jinja.jp/

■勝持寺

大原野神社から、縦貫道を超えたさらに奥にあり、別名は「花の寺」。
とは言え、鈴虫の音色が年中響く「鈴虫寺」とは違い、年中花が咲き誇るお寺ではありません。ここは桜の名所なので、100本以上の桜が咲き誇る春には、その名に違わぬ光景となります。

■正法寺

大原野神社から出て、向かって左手すぐの赤い橋を渡ったところにある、別名、石の寺。

境内には数々の動物に見立てた石が配置された石庭があり、標高も高いため、市街地から東山までが望めます。
ここ(というか、このエリア)まで足を延ばす方は、このお寺にゆかりのある方か、本当にお寺巡りが好きな方なのでしょう、年齢層もお高めで、終始静かな時間が流れています。

東山を借景に石庭を眺める時間は、贅沢そのものです。
平日なら、この景観が独占状態になることも。なかなか洛中では味わえない
体験です。

我が家ではつい先日も、最近始まった宿泊施設の「府民割」を利用して、洛西へ行ってきました。洛西バスターミナル脇の「ホテルエミナース」に、温泉が併設されているんですよ。
京都市内で温泉というのも、意外な組み合わせかもしれません。

洛西地区は「いかにも京都」な路地や街歩きは楽しめませんが、名所旧跡は一級品です。
町中の喧騒を離れて、静かな京都、静かな時間を楽しむならば、絶好の場所
洛西へ、是非おいでくださいね。

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