京都観光で贅沢さを感じる瞬間というのは人それぞれ、色々あるでしょう。
普段手を出せない料理やサービスを堪能したり、貴重な宝物や祭礼を人波掻き分け垣間見たりするのも素敵なハイライトではありますが、悠久の時を経た空間で、静かに自身と向き合うひと時を過ごすというのも、一つの贅沢ではないかと思っております。
この「静か」を体感するには、やはりオフシーズンを狙うが吉。無論、梅雨時がうってつけです。
むしろ、雨の方が良いんです。濡れた石畳に咲く傘の色彩も美しく、雨に煙る山々や、日増しに深くなる緑は目に優しい。そして、静かに響く雨音が、不思議と陰鬱な気分を運んでこないのが雨の京都。
今回は、人の流れを避けて、宇治まで足を延ばしてみましょう。
もちろん、散策には平日がおすすめです。
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アジサイやツツジが素晴らしく、関西では有名。アジサイだけで1万株を数えます。
アクセスはJR宇治駅から6月だけの期間限定直行バスで。
ただ、土日は残念ながら非常に混雑します。見頃を過ぎる頃に訪ねる方が良いかもしれません。
ここから先は、紹介する順番に沿って歩けます。
源氏物語ミュージアムをかすめて、宇治上神社へ。
世界遺産指定の背景は、現存するわが国最古の神社建築…ということですので、派手さや豪放さといった魅力はありませんが、この年代の社殿は京都市内には残っておらず、貴重です。
駅から距離があり、きっと空いています。雨ならなおさら。
宇治上神社から平等院を目指す道すがら、宇治川を渡ります。この宇治川の中州に、鵜飼で用いられる鵜の小屋があります。この「宇治川の鵜飼」は、京都に住んでいるとローカルニュースで毎年風物詩として取り上げられることが多く、シーズンインの報は、夏の訪れを感じさせます。
漁法としての鵜飼はすでに廃れ、あくまでも観光ショーとしての存在です。
今の時代感覚からすると一匹ずつ鵜に食わせた魚を吐かせて取るとは非効率極まりない漁に見えますが、鵜に取らせた鮎は傷がつかず鮮度が高く、皇室や将軍家は大金を積んで取り寄せ、珍重されたようです。
なお、宇治には観光協会所属の女性鵜匠が二人もいることでも有名です。
府のHPで人となりが紹介されていて、面白いです。
http://www.pref.kyoto.jp/yamashiro/meister/usyo.html
緑の山と水量豊かな川の風景は、どことなく嵐山のような風情を感じさせます。それもそのはず、平安貴族が別荘地として好んだ地ということで、発展の歴史は似ています。
ただ、観光客の人波は嵐山より幾分か少ないため、雰囲気は宇治の方がゆったりしているように感じます。
ちなみに「宇治川」は、琵琶湖から流れ出る唯一の川・瀬田川が京都府に入り名を変えたものです。この後、京都市内を流れ下った「鴨川」、丹波から保津峡・嵐山を経た「桂川」の三川が合流し、「淀川」と三度名を変えて大阪湾に注ぎます。
言わずと知れた平安建築(約950年前建立)の代名詞、10円硬貨に描かれた建物として有名です。
こちらは残念ながら混むのが当たり前、ゴールデンウィークなどは人でごった返し、堂内拝観は何時間も並びます。雨で空いていればラッキーです。
無理に堂内に入らなくても、庭園から雨の水面に映る鳳凰堂を眺めるだけでも価値ある時間を過ごせます。そしてここは、拝観料のみで入れる博物館が素晴らしい。国宝の、まさに宝庫。しばらく出て来れません。
伊藤久右衛門
中村藤吉
上林三入
稲房安兼
高村三光
これ、だーれだ?
すべてお茶屋さんの屋号です。
お茶そのものに加え、茶蕎麦に抹茶ソフト、茶団子に抹茶ロールにパウンドケーキに抹茶パフェ。胃袋がいくつあっても足りない。折角歩いたのに見事!
消費カロリー・リセットです。笑
でもいっか、人少ないし、誰も見てないし。
京都にも、宇治にもお茶畑がないよね?というのはたまに聞かれる話。
宇治市内にも茶畑は存在しますが、宅地開発によって徐々に狭めているのも事実。現在は、表を流れる宇治川を遡り、天ケ瀬ダムを経て支流の田原川に分かれ10kmほど上流にある宇治田原町と、そこから峠を一つ越えた和束町が宇治茶の中心的な産地です。
特に和束町は新幹線や東名高速から見える静岡の牧之原のような(と言ったら怒られるのか?)一面の茶畑が広がる、美しい山村。ディープな京都として、ぜひ稿を改めて紹介したい所です。
なお、宇治市立の小中学校には、地場産業へ親しんでもらう目的で、蛇口から茶が出る「茶飲み場」が設けられています。
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宇治市は、歴史と観光のまちのイメージですが、実は京都府下第二位、人口18万人を要する都市でもあり、京都や大阪に通勤通学するベッドタウンの顔も持ち合わせています。JRの京都駅からは20分足らずで着きますので、是非一度足をのばしてみてはいかがでしょうか。