雇用保険制度は、主たる事業所における1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に限り適用されることになっております。
現在、政府は「多様な働き方の実現」の考え方をもとに「副業・兼業」を促進しております。
そこで問題となるのが、「副業・兼業」により2か所以上の事業所に勤めた
場合の雇用保険の適用です。
雇用保険は前述の通り1か所の事業所において加入要件を満たさないと加入できないシステムになっています。
そのため、例えばA社で週15時間、B社で週10時間の合計週25時間勤務される場合などについては、合計で週20時間以上勤務しているのに雇用保険には加入できません。
このような問題点を解消しようと、この度、2か所以上に勤務する方の雇用保険のルールが変更されることになりました。
今回はこの点について取り上げてみたいと思います。
雇用保険のマルチジョブホルダー制度とは、2か所以上の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2か所の事業所での勤務を合計して、下記2.の要件を満たす場合に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度のことをいいます。
マルチ高年齢被保険者となるには、下記のすべてを満たす必要があります。
(1)複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
(2)2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(3)2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
マルチ高年齢被保険者が失業した場合は、一時金として高年齢求職者給付金を受給できます。
給付額は、退職直前6か月間を平均した1日当たりの賃金額の50~80%の30日分又は50日分となります。
雇用保険の手続きは通常は事業主が行いますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する本人(労働者)が手続きを行う必要があります。
手続きの窓口は、会社の管轄ではなく、労働者本人の住所管轄のハローワークとなります。
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、令和4年1月1日から始まります。
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、とりあえず65歳以上の方を対象として始まります。
今後は、65歳未満の方も対象とした制度に広げられる予定となっており、企業の人事担当者におかれましては、雇用保険料の天引きなど事務内容が煩雑になることが予想されます。
今のうちからしっかりと対策を取っておきましょう。