京都には「心霊スポット」と言われる場所が多くあり、そういうのが好きな人にとっては、いろんな意味で「たまらない」ようです。
古より戦乱が繰り返され、死屍累々の地ですから、まぁそうなんでしょうと。
……なぜそんな冷めた言い方なのか。
実は、私、小さな頃から、UFOとか幽霊とか、オカルト大好きな父と、そういうもの一切合切、完全否定の母という両極端な家庭に育ち、母側に付いたのでした。
目の前で、得体の知れないものを怖がる生き方か、怖がらない生き方を示されたら、わざわざ、怖がる道を選ぶ義理はありませんからね。
「筆頭」として名高い(?)この地は、京都盆地の北端、ちょうど五山の送り火の「妙」に近いあたりに広がる、10haほどの池です。
読み方としては、「みどろ」と「みぞろ」両方あり、どちらも通じます。
なんか、もう地名の響きからしておどろおどろしい雰囲気ですね。
発端は、昔、週刊誌や新聞で取り上げられた「とあるタクシーでの出来事」で、近年もテレビのバラエティー番組で放送されています。
語られるその内容は、概ね下記の通り。
・1969年(昭和44年)10月6日深夜のこと
・1台のタクシーが、「深泥池」へ向かう1人の女性客を乗せた
・間もなく到着という頃合いに、運転手が後ろを見ると女性は消えていた
・女性が座っていたはずのシートは、ぐっしょりと濡れていた
ありがちな怪談で、真偽のほどは定かではありませんが、何度もメディアに出るために、すっかり有名になってしまいました。
そして、長年にわたり話の尾ひれがいろいろつきまして、
・当時、似たような経験をしたタクシードライバーが続出
・タクシー会社は、夜間は女性客の乗車を拒否してもよいとお触れを出した
・その後も池に入水自殺を試みた人を見たから、自殺の名所に違いない
・底なしの池(実際は2m未満)には、昔から何万人もの死体が沈んでいるから、
呼ばれる
・危ないから絶対に近づいたらあきまへん
……というわけで、今ではすっかり地元の中高生やユーチューバー達の肝試しスポットになってしまいました。
しかし、夜間は女性客拒否て。それを会社が認めるて。
今やったら絶対炎上しますね。怖い怖い。
噂はともかく、深泥池、実は昭和初期から、まるごと国の天然記念物に指定されています。
池の出自としては、近くにある宝ヶ池のような灌漑用の人工ため池ではなく、1万年もの太古に、自然に形成されたものなのだそうです。
実際に訪ねると、池というよりは沼地・湿地の雰囲気です。
<グーグルストリートビュー>
https://www.google.co.jp/maps/@35.0599928,135.7708684,3a,84.8y,172.47h,91.1t/data=!3m6!1e1!3m4!1sTWlm4ys56WWkM6aNNV3qUg!2e0!7i16384!8i8192?hl=ja
→撮影は11月、博愛会病院のあたりから見下ろす位置です。
池の真ん中には浮島があって、夏は草に覆われ一面緑色になりますが、冬枯れの季節になると褐色に覆われ、沈みます。
画像中央奥のあたり、普通に木まで生えていますが、これで浮いているんですって。
この浮島の中には氷河期以来の植生が残り、うだるような暑さが自慢の京都盆地にあって、尾瀬や釧路の両湿原にあるようなコケが今も生きているそうです。
さらに、60種ものトンボが住みつき、170種を超える野鳥が飛来するなど、生物の宝庫です。まさに天然記念物たる所以。
なお、池の西側・南側は、道路を挟んですぐ際まで家々が建て込んでいます。
窓を開けたら天然記念物。天然記念物フロント。湿気すごそう。
このような場所なので、正直なところ、夜に自転車で通りがかっても、車通りは結構あるし、家の明かりも見えてるし……確かに池の方を見れば、真っ暗ではありますけれど。
街が近く、明かりが多いところから突如、暗闇のなかに放り込まれるような感覚を抱かせるから、そのコントラストが怖さを引き立たせるポイントかなぁ、などと、霊感ゼロの私は分析します。
新月の晩に花背(京都市市左京区北部)を走る、本物の闇の怖さに比べれば怖がり過ぎちゃうかな?
みんなでいじって遊んでるだけやろ。(※個人の感想です。)
このタクシーにまつわる怖い話の亜種で、目的地が「深泥池」ではなく「上花山(かみかさん)」バージョンもあります。
上花山には、市営斎場や霊園がありますが、東山区と山科区の境の「東山トンネル」脇の自転車歩行者専用の旧道トンネル「花山洞」も、よく「出る」と言われます。
ま、そのトンネル、私の自転車通勤経路で、普通に夜も通ってるんですが。
数年前までは、内部がモルタルを吹き付けただけの黒くゴツゴツした壁だったため、照明の暗さに斎場近さも手伝って「実にいい感じ」でしたが、耐震化のために補強してからは、すっかり近代的なトンネルに生まれ変わりました。
それでも、一つだけ怖い思い出が。
何年も前のことですが、夕暮れ時の花山洞の入り口で、不意に通りすがりのおじ様から声を掛けられたのです。
トンネルまでは急な上り坂なので、スピードが出ず、聞くしかない状況にありました。
曰く、北海道から来たが財布を落としてお金がない。フェリーの出る茨城まで行ければ、友人がおり何とかなるから、そこまでの電車賃を貸してほしい。
住所を教えてくれれば、帰宅次第すぐに送金する。
若かりし頃の自分は、妙にリアルなその境遇にある彼を無視する事ができず、警察に相談したら?と提案するも、そのようにしたがダメだったんだと。
なれば、道なりに大津SAまで歩いて、ヒッチハイクしなさいと。
その上、これで何か飲んでくださいと、500円玉を渡しました。
まぁ、この時は本当に、お金持ってなかったんですが。
今になって思うに、あれ、絶対、そういう「手口」ですよね。
ちょろそうな奴に片っ端から声かけて同情させて、オレオレ詐欺の逆版か。
個人情報を渡さなくて良かったと、真剣に思います。怖い怖い。
(ちなみに「公衆接遇弁償費」なる制度がありますので、こういうときは警察を頼りましょう。)
ほかにも、清滝トンネルとか、船岡山とか、天ケ瀬ダムとか、いろいろ言われている所はありますが、今日はこの辺で。