労働条件通知書とは、労働時間、休日、仕事内容、賃金、退職などの労働条件について記載した文書のことをいいます。
事業主さんが新たに労働者を雇用する際には、労働者に労働条件通知書を交付しなければなりません。労働条件通知書には、採用当初の労働時間や賃金などの労働条件について記載します。
それでは、もしその後、これらの内容に変更があった場合、改めて労働条件通知書を交付し直す必要があるのでしょうか。
そこで今回は、労働条件通知書の扱い方について取り上げてみたいと思います。
労働基準法第15条には、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を書面により明示しなければならないと定められております。つまり、法律により労働条件通知書の作成・交付が義務付けられているわけです。
ただ、法律で義務づけているのは、あくまで労働条件を記載した文書を交付することのみであり、雇用契約書を取り交わすことまでは求められていません。
しかし、労働条件通知書を交付するだけでは、事業主側に控えが残らず、確かに交付したという証拠が残らないため、後々トラブルになることも予想されます。
そのため実務上は、雇用契約書を2部作成し、事業主と労働者の双方が1通ずつ保管するという手法を取ることが多いです。
それでは労働条件に変更が生じた場合はどのようにすればよいのでしょうか。
前述のように、労働条件通知書の交付義務があるのは労働契約を締結したときのみです。
もちろん労働条件が変更になる都度労働条件通知書を交付してもかまいません。
しかし、それでは実務上手間がかかるので、実際は変更内容を記載した「辞令」を交付することで対応することが多いものです。
労働条件通知書や雇用契約書(以下「通知書」という。)についてのよくある誤解として、期間を区切ってしまうというものがあります。
例えば、期間の定めのない雇用契約(定年まで働ける雇用契約)を締結しているにも関わらず、毎年4月1日に定期昇給するという理由から、通知書に雇用契約期間を4月1日から3月31日と記載するケースです。
通知書に記載するのはあくまで契約当初の労働条件ですので、翌年4月から昇給するからといって契約期間を区切る必要はないのです。昇給時は前述のように辞令を交付することでよいのです。
なお、昇給時に「雇用契約期間の定めなし」と記載され、かつ昇給後の賃金を記載された通知書を交付するのでももちろんかまいません。
通知書に、本社勤務など勤務地が記載されているため、転勤させることができないと誤解されているケースがよくあります。
これについても同じく契約当初の勤務地が本社であることを明示しているだけですので、転勤させられないわけではありません。ただ、通知書に勤務地限定などの表記があれば本人の同意なく転勤させることはできませんので注意が必要です。
なお、転勤させる可能性のある企業の場合は、就業規則に転勤させることがある旨の記述をしておいた方が無難でしょう。
労働条件通知書は、事業主さんと労働者の間の労使トラブルを避ける上で非常に大切な書面です。
採用の都度作成・交付するのは手間がかかりますが、ひな形を作成しておくなどし、スムーズに作成・交付できるようにしておきましょう。