朝夕涼しくなり、過ごしやすい季節となりました。又、寒暖差で体調を崩しやすい時期でもあり、気をつけたいものです。
中小企業の後継者不足が深刻な問題となっており、大半の経営者は事業を何らかの形で親族や他人に引継ぎたいと思っているが、適切な人材が見当たらず、廃業やM&Aも視野に入れている方も少なくありません。
私も後継者は決まってはいるものの、株式の高額評価により、相続税を心配されている経営者のお話を聞きくことがあります。
今月は、中小企業の後継者へ事業を引き継ぐ際の株式移転における税制上の優遇措置をご紹介いたします。
「事業承継税制」とは中小企業が円滑に事業承継を行えるように設けられた税制上の特例です。
先代経営者から後継者への自社株式の移転方法は、売買、相続、贈与などがありますが、業績の良い企業ほど株価が高い為、贈与税や相続税に頭を悩ませています。
この「事業承継税制」を利用することにより、要件を満たした手続きをすれば、先代経営者から後継者に自社株が移転する際に、相続税や贈与税の納税猶予及び免除を受けることができます。
今回は贈与税の納税猶予及び免除について説明いたします。
手続きの流れに沿って概要を説明します。
<1>
先代経営者(贈与者)から後継者(受贈者)へ全部又は一定の自社株式を贈与します。
→自社株式の評価を事前に行っておいて、贈与財産額を計算します。
→株式の贈与契約書を作成します。
<2>
贈与を受けた年の翌年1月15日までに、「経済産業大臣の認定」を受ける申請を行います。
→認定等の窓口は企業の主たる事務所が所在する各都道府県です。
<3>
贈与税の申告を行います。(翌年3月15日期限)
→贈与税の申告書にこの特例を適用する旨を記載し、一定の書類を提出します。
→猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供しなければなりません。
<4>
申告期限の翌日から5年間(経営承継期間)は贈与された株式を保有します。
→経営承継期間内に株式を売却などした場合には、猶予されている贈与税と
利子税を併せて納付します。
<5>
猶予税額の免除
→先代経営者が死亡した場合や後継者が死亡した場合のほか、経営承継期間経過後に破産手続きなどがおこなわれた場合には猶予されていた贈与税額は免除されます。
続いて各要件について説明します。
(1)会社の要件
次のいずれにも該当しないこと。
上場会社、中小企業に該当しない会社、風俗営業会社、資産管理会社
(2)後継者(受贈者)の要件
贈与の時において、役員就任から3年経過し、会社の代表権を有していること。
20歳以上であること。
後継者等の保有議決権が50%超でかつ、最多議決件数を有すること。
(3)先代経営者の要件
会社の代表権を有していたこと。
贈与時において会社の代表権を有していないこと。
贈与の直前において、先代経営者の保有議決権が50%超でかつ、最多議決権数を有していたこと。
(4)雇用8割要件
経営承継期間(5年間)の平均が、贈与時の雇用者数の8割を下回らないこと。