朝、地下鉄の駅から出ると、国道を歩きます。
厳しく冷え込んだ朝は、滋賀方面からくるトラックの前面には、
雪がこびりついています。
一年前、私がミモザへ初出勤したのも、寒い寒い冬の日でした。
この会社へ勤め始めて、一年が経ちます。
訳あって人生初の転職をすることになったが、なぜこの会社なのかと聞かれれば困ってしまう。
私は、その時、自分にルールを課していた。
「一番最初に内定を下さった会社に、お世話になる」
自慢とか過剰な自意識では全くないのだが、面接後、ハローワークの担当者に言われた。
「君はもっと大きな会社に入れるんじゃない?もう少し頑張ってみなよ」
「本当に、いいのかい?履歴書は、一度汚れると取り返しがつかないよ」
入社後も、色々な人に言われ続けた。
「そんな小さな会社に入って、大丈夫?」
「それっぽっちしかもらえないの?この先やっていけるの?」
「なんでまたこの会社?」
でも、そんなことは、どうでも良かった。
私はルール通り、一番初めに声をかけていただけた今の社長に仕えた。
世間体とか、大卒の男の子が辿るべき、世の中のメインルートからは外れてしまったのかもしれない。
うちの会社は、小さいし新しいけど、世界に誇るような、特殊な技術を持ったベンチャーではない。
何か特別なアイデアだけで、黙っていても金が入る会社でもない。
特別頭のいい人間が集って、特別なことを考えているわけでもない。
市井の一般人が、己の思うところを一生懸命深めて、ぶつけ合って、少しずつ前に進んでいく。
トラブルもある。至らぬ部分もある。でも、一つずつ直していける。
小さい会社だからこそ、まだまだ先が分からない面白さがある。不安もある。仕事の本当の楽しさは、そんな自分の一挙手一投足から「未来を切り拓いていく実感」の中にあるのかもしれない。
そして、リーダーとしてその一翼を担わせていただいている、重みと緊張感。
私はようやく、社会人として、一人前になれたように思う。
入社前日に、手帳に書いた「初心」を今、改めて見直している。
『気概を持って取り組む』
どんな仕事、場所であっても、人生の中で肥やしにならない経験はない。その属す集団・業界の中で、常に一位を目指す。最善を尽くす。一流の仕事を捻り出す。それは何かと問い続ける。
『全ては有限と思う』
一分、一秒、みな全て終わりに近づいていく時間。今回の人生でやるべきこと、やっておきたいこと、掲げた理想は、すべて実現に向けて働きかけること。決して環境を言い訳にしないこと。
『頭を使う。地頭、地力を鍛え抜く』
今は「入る」とき。狂ったように知識を吸収し、それを実践してみよう。使えば使うほど磨かれていく、頭と身体を鍛え抜くべし!
少し危なっかしいが、間違っていないような気がする。
来年の今頃、またこれを思い出すとき、どんな気持ちを抱くだろう。
当たり前だが、それは今日のこの瞬間から、作られていく。